親友
「 放課後の教室で、俺は幼馴染で親友の 暇つぶしに借りた今日発売の漫画雑誌を読んでいたら、当の佑が絶叫しな がらドアを勢いよく開けてきたので俺は驚いて顔を上げた。 「何や佑、えらいおっかない顔して」 「お前、好きな奴おるってホンマか?!」 俺の疑問を全く無視して叫ぶように佑が訊いた。 俺は何だそのことか、と半ば呆れながら答えた。 「お前それさっき聞いたん?」 「そーや、委員会で一緒になった秋山とか畑中とかが、俺に言いよった んや」 昨日の今日のことを考えると、まあ早いほうかとも思うが、それにしても。 「鈍い鈍い思うてたけど、ここまでとはなぁ」 溜め息をつきながら言っても、その意味なんか全然気づいてないように佑は 怒鳴った。 「おるんか?!俺聞いてへんで!!」 「…だって言うてへんし」 言えたら今ごろ小躍りしとるわ…嘘やけど。 「なあ、誰なん?メッチャ気になる」 嬉々として訊いてくるもんだから、俺はなんだかやけっぱちになった。 昨日、告白してきたコについつい本音を漏らしちまったのが運のつきかも しれない。 「小さくてな」 「うん」 「メッチャ気ぃ強いねんけど」 「うん?」 「笑った顔がメッチャかわええコ」 「へえ、お前ってそんなコが好きなん」 妙に嬉しそうに佑が笑っている。 俺はそれを見て頷いた。 「そう」 「そんなコ知ってるかなあ」 予想を立て始めたのか、沈黙がある。 俺は敢えて放っておいた。 外はどんどん闇を濃くしていく。 「…ん〜?全っ然分からん!御咲、俺の知ってるコなん?」 「………ああ」 お前がいちばんよく知ってるやろ? だって、それって。 「降参や!御咲、教えてえな」 心底困った顔で佑が聞くから、俺は緩く笑った。 「しゃあないなあ…」 いちばん簡単で、いちばん難しい。 答えは、そこに。 |