「今までは これからは」 番外

 

「アイロンくらいかけろ」

 そう言って辻が俺のワイシャツにアイロンをあてる。

「別に吊るしときゃ皺になんねーし、」

 いい訳染みた言葉は辻の鋭い視線に中断させられた。

 

 まだ落とされたわけでもないのに、何故だか言いくるめられ辻と同居する

ことになった俺はこんな感じで毎日小言を言われる。

 しょーがないだろ?

 家事全般苦手なんだから。

 それでも今まで生きて来れたんだし、きっとこれからも大丈夫なんだよ。

「大体おまえ、俺のこと好きじゃなかったのかよ?」

 もうちょっと大目に見てくれたっていいじゃねーか。

「好きだが?」

 さらっと言うわりに厳しい視線はそのままだ。

「なら、もうちょっと優しくしろよ」

「なんだ、優しくして欲しいのか?」

 思わず出た呟きに辻は面白そうに目を細め、アイロンを片付けると手招き

した。

「?」

 特に深く考えもせず、近づいていくと辻は俺を抱きしめ、恥ずかしくなるくら

い甘い声で好きだと囁く。

 惚れたほうが負けじゃなかったのかよ……!!