君と一緒に。

 

「やあ」

 いつも通り突然に、部屋を訪れてきた恋人。

「やあ」

 俺もそれだけ言うと扉を開き、彼を部屋へ招き入れる。

「寒かったー」

 そう言いながら今まで俺がいたコタツに足を突っ込み丸くなる。

「ねー、ソバ食いたい。年越しそばー」

 いきなりの要求にも慌てず、鍋を取り出して水を張る。

 慣れというのは恐ろしい。

 つきあいはじめたころは、こんな彼の突飛な行動にいつも戸惑っていた

俺だが、最近ではどんな要求をしてくるかさえ読めるようだ。

 俺がそばをゆでていると勝手にリモコンに手を伸ばしチャンネルを変えて

いる音が背後から聞こえた。

 いや、別にいいんだけどね。

 作ったそばをどんぶりに盛っていると背後の彼が俺を急かす。

「早く〜。カウントダウン始まっちゃうじゃん」

「はいはい」

 俺は無造作に箸を挿した丼を両手に持ち、コタツへ向かう。

「はい。出来ましたよ」

 彼の目の前に出すと嬉しそうに笑い、いただきますと手を合わせる。

「うまい」

「それはよかった」

 そう言ってそばを食べながらカウントダウンを見る。

『明けましておめでとうございます!』

 テレビから流れてくる声に反応したように彼は視線を俺に向けた。

「あけましておめでと」

「おめでと」

 そう言うとやっぱり笑顔で残りのそばをすする。

「満足?」

 空になった丼を見ながら俺が言う。

「うん。まあねー」

 お腹いっぱい、なんて言いながら寝転がる彼。

「そばは美味しかったし、あったかいし。好きな人と一緒だからねー」

 誘っているのかと思えば、彼はいつのまにか小さな寝息をたてている。

「よいお年を」

 そう囁いて彼のおでこに今年初のキスを贈った。

 

 

よいお年を。

 

睦月