今日は何の日?

 

「なあ、相原〜。今日何の日か知ってる?」

 藤沢はそう言いながら相原に纏わりつく。

 今日は2月14日。

 言わずと知れた、バレンタインデーである。

 いくら男同士とはいえ、恋人であるふたり。

 もちろん藤沢は相原からチョコを貰えると信じて疑わない。

「あぁ……っと、今日、何日?」

 食事を作っている相原を見つめ、新婚さんのようだ、と思っている藤沢には

この言葉も照れ隠しにしか聞こえない。

「2月14日」

 その言葉に少し考える仕種をしてから相原はああ、と呟き、包丁を置くと

振り向いた。

 そしてさっき出汁をとっていた煮干を袋から出し、藤沢の口へ入れる。

「はひ?」

「どうした? 好きなだけ食っていいぞ?」

 困惑している藤沢をよそに、相原は至って大真面目である。

「今日、何の日?」

 咥えた煮干を吐き捨てるわけにもいかず、噛み砕いて飲み込んだ藤沢は

相原の顔を見つめる。

「……は? ニボシの日だろ?」

 おまえが聞いたんじゃないか、と至極真面目に答える相原に藤沢は

がっくりと肩を落とした。

「食べたいんじゃないのか?」

 心配そうに顔を覗き込まれ、食べたいのは別のものだと言ってやる。

「……俺か?」

「…………」

 考えて出したのだろう必死の答えに、どこまで世間知らずなのだろうと

考える。

 しかしまあそれも悪くないと思い直し、存分に頂くことにした。

 

如月