そこに在るもの

 

「俺、結構大きくなるまで信じてたんだよね〜」

 大きなツリーを飾りつけながら恋人が言う。

 男ふたりの家にこんな大きなツリーが必要なのかと思うのだが、可愛い顔

でお願いされれば断わることは出来ない。

「何が?」

「サンタクロース」

 ツリーに飾るサンタを手に取り、俺に見せる。

「クラスで俺だけ『絶対いる!』って言い張ってたもんねー」

 そんな昔の彼を想像し、微笑ましくなる。

「いるよ。きっといる」

 俺がそう言うと彼は少し驚いた表情をした。

「サンタクロースは愛と同じなんだよ。目に見えないだけ。信じていれば

在るものなんだ」

「おまえがそんなこと言うなんてな……」

 いったい俺をなんだと思っていたのか、彼はそう言いながら俺の肩に頭を

預ける。

「でも、いいな。そうゆう考え方」

 そう言いながら擦り寄ってくる彼が愛しくてしょうがない。

 だからバレないようにしなければ。

 その言葉が受け売りだってことを。

 

師走