キミとボク
「おかえり!」 そう言って帰ってきた祐司を抱きしめて、ひとしきりキスをした後、 「ジャジャーン」 と効果音を発しながら食卓へ連れて行った。 「……?」 祐司は首を傾げ、俺を見上げて不審そうにしている。 まさか。 「祐司? 今日、何の日か、憶えてる……?」 恐る恐るそう訊く俺に、祐司は少し考える素振りをしてから怖々と首を 振った。 「そっか……」 いいんだ。どうせ俺ばっかり好きなんだ。 祐司に出逢って一目で恋に落ちて、運命の人だなんて思ったのは俺だけ なんだ。 お祝いしたくて結構時間掛けて頑張った料理もはじめて作ったケーキも 望まれてなんかなかったんだ。 「ごめんね?」 イジケモードの俺を祐司が可愛く覗き込む。 「何の日か、教えてくれる?」 大好きな恋人にそう言われれば断ることなど出来ず、俺は正直に打ち明 けた。 「俺たちが出逢った日。俺が祐司に恋をして、運命を感じた日」 まっすぐ瞳を見つめてそう言えば、祐司はみるみる赤面し、その場に座り 込んだ。 「えっと……忘れててごめん。ありがとう」 俯いたまま呟くように祐司が言う。 「俺こそ、俺ばっかり、……ごめん」 その言葉に祐司は視線を上げ、思い切り首を振った。 「嬉しいよ? 俺のこと、好きでいてくれるのも、俺とのこと、憶えててくれる のも」 まだ紅い顔のまま祐司は微笑ってもう一度、ありがとう、と言ってくれる。 「次はつきあい始めた日お祝いしよ? 今度は俺が頑張るから」 「う……うん。……ありがとう……」 引きつった表情がバレないように、俺は祐司をしっかりと抱きしめた。 明日プレゼントを買いに行こう。 毎日持ち歩いてれば問題ない……だろ? |