SWEET HONEY

 

「はい、修さん!」

 そう言って手渡された箱に首を傾げる。

 察するにスーツのようだが、そんなものをプレゼントされる理由が思いつ

かない。

「……修さん……? 憶えて、ないの……?」

 まさか、という言葉を顔に貼り付けたままの問いかけに俺は再び首を傾

げた。

 誕生日でもない。

 クリスマスでもない。

 バレンタインでもない。

 ……何の日?

「酷いっ! 修さん、俺のこと好きじゃないんでしょ!?」

 よくわからないが機嫌を損ねてしまったらしい。

「そんなわけないだろう? こんなに愛しているのに」

 大奮発でそう言ってギュッと抱きしめ、頭を撫でながら髪にキスをして

やる。

 なんだか犬みたいな扱いだったか? は思ったが、彼は気にしていない

らしい。

「で、何の日か教えてくれるか?」

 しばらくムスッとしていた彼だが唇にキスをしてやると諦めたように呟いた。

「つきあった日……」

「は?」

「俺と修さんがつきあい始めた日だよ!」

 ……そんなこと?

「祝うほどのことか?」

 俺は一生そばにいられるように素っ気無くしているのに、たった一年?

「祝うでしょ! 大切な日だよ!!」

「そうか、おまえにとったら一年ももつなんてことないもんな。なんなら一月

ごとに祝うか?」

 いつもの口調で返したが、よほど大切な日だと思っていたのか、本気で

しょんぼりしてしまった男にどうするべきかと思案していると彼は俺の膝の

上にあった箱を放り投げた。

「いい!」

「ん?」

「もう、いい!」

 どうやら本気で怒らせてしまったようだ。

 甘い言葉で宥めてみるか、いつも通り冷たく突き放すか、考えて考えて

無言になってしまった俺に男はとんでもないことを言い出す。

「次はスイートテンダイヤモンドだからね!」

「…………ハハ」

 思わず笑ってしまった俺にまたしても彼は不機嫌になってしまったようだ。

「じゃあ、おまえのためだけにダイヤモンドリング、デザインしてやるよ」

 でも、そう言ってキスしてやればたちまち浮上するお手軽な男。

 俺の愛しい恋人。

 

一周年記念