どんな天気も

 

「なんだ、おまえ」

 扉を開けた瞬間、実の容赦ない言葉を浴びる。

「だっていきなり降ってくんだもん」

 そう言って濡れた髪を掻き上げ、水気を絞る。

 服からも雨が滴り落ち、三和土には水溜りが出来ていく。

「さっさと風呂入れ」

 実に浴室に押し込まれ、張り付いて中々脱げないジーンズに苦戦しつつ

シャワーを浴びる。

 びしょ濡れになってやってきた恋人にもっと優しい言葉はかけれないもの

か、とは思うものの俺が好きで実に会いに来てんだし、しょうがない。

 

 

 

「…………」

 実さん? これ、嫌がらせですか?

 思わず出た溜め息に、しかし他に手段もなく脱衣所に用意されている服を

着る。

 ジャージの裾は短いわ、Tシャツはぴっちぴちだわ。

 育ち盛りの高校生を嘗めんなよって感じ。

 いや、実も小さいほうじゃないんだけどさ。

 

 

 

「ちゃんと温まったか?」

 出てきた俺にお子様仕様のコーヒー牛乳を差し出す実。

 だからブラック飲める、つってんじゃん。

 でもまあありがたく頂戴し、体の中なら温まることにした。

「……育ったなぁ……」

 親戚のおっさんみたいなことを言いながら実が俺の躯を見る。

「昔は裾折り曲げてきてたのになぁ」

 しみじみと言うなよ。マジおっさんみたいじゃん。

 確かに昔は小さかったよ?

 当たり前じゃん。小学生だったんだからさ。

「あ、他に服ねーんだから、そのまま帰れよ」

「……酷っ」

 このウチに乾燥機なんてものがないのも知ってるし、そんなことは求めて

ないけど。

 まだ雨だってめちゃくちゃ降ってんじゃん。

「乾くまで泊めてよ」

 その頃には雨もやんでるだろうし。

「コインランドリー行けば?」

 確かに歩いて10分くらいのとこにあるけどさ。

「……俺にコレで行けって?」

 おい、あっさり頷くなよ。

「いいじゃん。明日も明後日も休みなんだし」

 俺がそう言って抱きしめれば、しょうがないな、と溜め息をつく実。

 だから雨って嫌いじゃない。

 

君といつまでも。