休日の楽しみ方

 

「旅行行こーよ」

 一馬が言った。

 今日は世間で言うところのゴールデンウィーク初日だ。

「馬鹿か?」

 今から計画立ててどうすんだ。

 宿だってとれねーだろうよ。

「じゃあ旅行じゃなくていいからさー。どっか行こーよ」

「混むから嫌」

 俺はウチでごろごろしてたいんだ。

 どうせ疲れるだけなんだから。

「家族と行けば?」

 連休のたびに泊りに来て家族は何も言わないのか、とそう訊けば。

「何言ってんの。小学校のときからだよ? 親だって諦めてるって」

 ……それでいいのか。

 ナンカ責任感じるかも。

 お宅の息子さんホモにしてすみません、みたいな?

 つーか俺がホモにされたんじゃねぇ?

「ねー、どっか行こーよー」

 駄々っ子のように(というか駄々っ子そのものなんだけど)一馬が手足を

バタバタさせる。

「あー、うるせえ。行きたきゃ勝手に行けよ」

「実と一緒じゃなかったら意味ないじゃん」

「知るか。俺は人がゴミゴミしてるよーなとこには行きたくない」

 今なんてどこ行っても混んでてイライラするだけなんだから。

 どこにも出掛けたくない。

 ダラダラと自堕落な生活が出来るのだって休みのときだけなんだから。

「じゃあ足腰立たなくてどこにも行けなくなってもいいんだね?」

 ……なんかすっげー怖いこと言われた?

 返事する前に一馬は俺を押し倒し、嬉々として服を脱がせにかかる。

 あー、楽しそうでいいですね。

 

 

 

「腹減った」

「そーだね」

「そーだね、じゃねえよ。おまえが足腰立たなくしたんだから作れよな」

 そう言って押し潰されそうな狭いベッドの上から原因を突き落とす。

 ごん、と小気味よい音を立てながらベッドから落ちた一馬は渋々といった

表情を作り、キッチンへ向かった。

 ホントは料理は絶対俺のがうまいんだけどね。

 というよりも俺のが一馬より圧倒的にデキル男だと思う。

 でもしょうがない。

 宣言通り足腰立たなくされちまったんだから。

「出来たよー」

 そう言う一馬に腕を差し出す。

「連れてけ」

 動けなくしたのおまえだろ?

 

 

 

 こうやって飯食って、だらだらして。

 セックスして、一緒に風呂入って。

 かなり狭いユニットバスに大の男が二人。

 はたから見たら結構笑える光景だけど、おまえとなら幸せ。

 こんな連休も悪くないんじゃない?

 まあ、一馬には言ってやんないけどね。

 

君といつまでも。