素直な君

 

「チャンネル変えていい?」

 一馬がそう言って了承も得ぬままにテレビのチャンネルを変える。

 別にいいけどさ。

「なんで? 観てなかったから別に観ればじゃん」

 話題の超大作映画。

 俺が出不精だったせいもあるし、観たいなぁとは思いながらも結局観てい

なかった。

「だって泣かせようと思って作ってる映画ってワザとらしくねぇ?」

 だから嫌い。

 そんなことを言いながら顔を顰める一馬に、気づかれないようにそっと苦笑

した。

 知ってる。

 ホントは俺に泣くとこ見られたくないだけってこと。

 こう何度も同じことがあればいくら俺だって気づく。

 視聴者体験談みたいなのでも泣いちゃうくらい、ホントは涙もろいってこと。

 別に素直に感動できるのっていいことだと思うけどなぁ。

 大して面白くもなさそうな番組を見ている一馬の横顔を見つめながら、今度

無理矢理感動映画に連れ出すのも楽しいかもしれないと思った。

 どんな手を使おうか、と楽しくなっている俺に、不思議そうに一馬が首を傾

げる。

「何でもねーよ」

 近々事件が起こるとも知らず、一馬はもう一度首を傾げ、視線をテレビに戻

した。

「なぁ一馬、日曜、映画観に行こうぜ?」

 

君といつまでも。