初恋
〜おまけ〜

 

 どうやって渡せばいいんだろう?

「日頃お世話になってるから」?

 男同士で遊園地なんて……普通気味悪がられるよな……。

 なんかキッカケがあればいいんだけどなぁ〜…

 

 

 

 俺が悩んでるのは、風紀委員でイッコ年上の吉川渚先輩に恋してるって

こと。

 なんであの人あんな可愛いかな〜?

 幼い子供みたいに無邪気に笑うとことか、真っ黒なサラサラの髪とか。

 身長のわりに俺より細くて綺麗なカラダとか。

 何度押し倒してしまおうと思ったことか。

 

 で、悩んでるのがコレ。

 遊園地デート(希望)にでも誘おうかと思ってんだよね。

 でも、いくら親しくったっていきなり男に遊園地にふたりで行こうって誘われ

たら気色悪くねえ?

 なんかいい言い訳ないかな〜? と思ってんのよ。

「拾った、とかはムリありすぎだし……」

 呟いてチケットを見つめる。

「貰った……?」

 ああ! それアリかも。

 新聞屋? 親戚? 友達?

 なんか絶対、先輩が断れないのないかな〜??

「おう! どうした?」

 ぶつぶつ呟きながら悩む、他人から見たらさぞ不審人物だっただろう自分

に声をかける人物がいた。

「委員長」

「おまえ、かなり怪しい人だったぞ」

 委員長こと楠大介先輩がケラケラと笑いながらそう言う。

 ええ、自覚していますとも。

「ほっといてください。それより、なんでこんな時間にいるんですか?」

 言外に仕事押し付けたくせにと問うと、

「委員長は忙しいのよん」

 と言って委員長はまたケラケラと笑う。

 なんだか掴み所のない人なんだよな……

「あっ!! ソレ、どうしたんだよ?」

 笑っていた委員長が急に声を上げ、手の中のチケットを指す。

「あ…これは……」

 なんて言えばいいのか……

 彼の目からは“いいな〜”光線が出てるし。

「吉川誘うのか〜?」

 光線を出していたはずの眼がニヤリと細められ、とんでもないこと(図星

なのだが)を言い出した。

「そうか、そうか」

 絶句している俺をどう思ったのか、彼はひとり納得している。

「何言ってるんですか?」

 心の中でどうしてわかるんですか? と問う。

「委員長はなんでもお見通しなのよん♪」

 こうゆうふうだからこの人は掴み所がないんだ。

 笑いながら先を歩く委員長を見ながら思う。

「俺の名前使ってもいいぞ」

「へっ?」

「この委員長サマのお名前を使っていいと言ってるんだ」

 振り返り威張りながら委員長が言った。

「どうせ誘う口実がないんだろ?」

 委員長はそう言って、また不思議そうな表情をしているだろう俺に

「委員長はなんでもお見通しなんだ」と言った。

 もう…ホントにこの人には敵わない。

「ありがたくそうさせてもらいます」

 用事があるから、と先を行く委員長にそう声をかけ、自分も正門へと

向かった。

 

 さて、彼はどうするだろうか?

 委員長の名前を出せば、デート(希望)をしてくれるかな?

 にやける顔を修正し、俺は正門で待つ愛しい人の元へと急いだ。