告白
大好きな人と恋人同士になった。 でも、彼に「好き」と言えない。
「俺の恋人になってくれる?」 「いいよ」
ってことで、俺たちは恋人同士になった。 その頃はただ自信満々な渡辺が憎らしくて、焦らしてただけだった。 でも最近は―――…
「先輩、日曜ヒマですか?」 「ヒマだけど?」 渡辺の顔を直視できず、俯いたまま答える。 「えっと、俺ん家来ませんか?」 「別にいいよ」 どうしてもっと、気の利いたセリフが言えないんだろう? 渡辺だって、呆れてる。
どうしていいか、わからない。 まだ恋人同士になって3ヶ月。 俺より小さくて可愛かった渡辺はいなくなった。 俺よりも5センチは高いだろう身長で、男臭く微笑う。 ドキドキして、直視なんてできない。 今でも好き。 今までよりも好き。 でもその告白は、タイミングを外したまま。 愛想尽かされたら、どうしよう? 別れたい、なんて言われたら、俺はどうすればいいんだろう……?
『今から行く』 メールでさえ素っ気無くなってしまう。 どうして素直になれないんだろう……?
「あら、いらっしゃい」 インターフォンを押すと、おばさんがそう言って出迎えてくれた。 「どうぞ、上がって。陸なら部屋にいるから」 「お邪魔します」 そう言って玄関で靴を脱ぎ、渡辺の部屋へと向かう。 「渡辺?」 小さくノックした後、扉を開く。 「おばさんが、上がって、って……」 「いらっしゃい」 渡辺はそう言って、俺に近づき、扉を大きく開いた。 「うん」 やっぱり直視できなくて俯き加減にそう言うと、俺は腰を下ろした。 「先輩、何飲む?」 「なんでも……」 目を逸らしたまま、そんな素っ気無いセリフしか出てこない。 「ん……わかりました……」 渡辺はそのまま部屋を出ていく。
なんで、こんな風になっちゃうんだろう? このままじゃ、愛想尽かされる? 俺はこんなに好きなのに……
「先輩……?」 窺うように扉が開き、声をかけられる。 「なっ、何!?」 嫌われたくないな、とか。俺より可愛い子なんていっぱいいるよな、とか。 そんなこと考えて、ひとり淋しくなってたところだったから、怪しいくらいに 驚いてしまった。 「いや、ケーキあったんだけど。……紅茶でよかったですか?」 「うっ、うん」 そう返事すると、渡辺は俺の前に持ってきた盆を置いた。
「俺のこと、どう思ってるんですか……?」
「どう……って……?」 そんなこと訊かれるとは思ってなかった俺は、戸惑いながらそれだけ訊く。 「最近、何かよそよそしいし、俺のこと……」 大きな男が淋しそうに項垂れる。 なんだ、俺のこと、好きなんじゃん。 「俺は……俺より小さくて可愛かった渡辺が好きだった……」 俯いて呟くように言ってやる。 これくらいのイジワル許されるよね? 「それって……」 今は俺のこと嫌いなんですか? 顔に書いてあるって、きっとこんな感じ。 違うよ。 「今も好き……でも、ドキドキする……」 俯いたまま言う。 告白だよ? わかってんの? 「ドキドキ……?」 「だって、渡辺カッコよくなったし……あの頃とは違う……」 見なくたってわかる。 折角の男前が台無しなくらいのニヤケ顔。 「俺のこと、好き?」 「好き」 今度は即答してやる。 すると嬉しそうに渡辺は俯いてる俺の頬にキスをする。 「先輩、好きだよ」 その言葉に今日はじめて、渡辺と目を合わせた。 「俺だって……」 紅くなる頬が恥ずかしくて目を逸らそうとするけど、それを渡辺に阻止 される。 「大好きだよ」
俺だって大好き。 これからもずっと、大好き。 だからいつまでも恋人でいてよ? |