今日だけは

 

「わかんないとこあるか?」

 そう言って先輩は自分の終わった夏休みの課題をしまっている。

「早く終わらせてプール行こうな」

 可愛い笑顔を見せられれば、俄然やる気が湧いてくるってもんだ。

 夏休みの課題なんてのは面倒臭いだけで、誰にでもできる簡単なもん

なんだから。

 

 

 

  残り2ページを終わらせると、飽きたのか先輩はベッドに寝そべり、俺の

枕に顔を埋めている。

 ……誘ってんの?

 そうっと先輩ににじり寄り、背後から耳を舐める。

「ひゃっ!」

 耳を押さえて振り向いた先輩の唇にキスをして。

「渚……」

 小さく囁くとみるみるうちに真っ赤になって、上目遣いで俺を見る。

 俺が先輩の名前を呼ぶのはふたりっきりのときだけ。

 ふたりっきりというか、その、えっと、つまり……のとき。

 だから先輩も条件反射になっているのか、頬を染めて瞳が潤んでる。

 うわー! むっちゃ可愛いー!!

 だめだ! こんな先輩誰にも見せれない!!

「渚……やっぱプールやめよ? 誰にもこの躯見せたくないもん」

 そう言ってするりとシャツに手を差し込み、薄い腹にキスをする。

「ね? お願い」

 俺の言葉に先輩はむーっと唸りながら頬を膨らませる。

 そうだよなー。プール行くの楽しみにしてたし。

 ごめんなさい。でも嫌なんだもん。

「今日だけだからな」

 その言葉にちゅっと音のするキスをして、先輩に抱きつく。

「渚、大好き」

 きっと今日だけ、の約束は守れないけど、それでも許してね?

 

初恋