悪い男と冷たい男
「好き」の返事は「あっ、そう」。
年上の綺麗な人に惚れた。 今までのダラシナイ交遊関係を清算したら考えてもいい、と言われ、何人 いたかわからない暇潰しの男女をすべて切った。 彼一筋になり、なんとか恋人、という地位を獲得したが、彼は相変わらず 素っ気無い。 俺はこんなにメロメロなのに。 「好きだよ、修さん」 そう言って擦り寄り、髪にキスをする。 「あっ、そう」 開いた雑誌から目を外すことなく、素っ気無く答える彼。 本当にこれで恋人といえるのだろうか? 「ねえ、俺のことホントに好き?」 「まあな」 ……ホント? 確かに嫌いな人間はそばに置いとく人じゃないし、嫌われてはいないと 思う。 でも、これほどまでに素っ気無いと、疑いたくなるよ? 「ね、じゃあ、確認させて?」 そう言って俺は、彼の首筋にキスをして誘う。 彼は小さく溜め息をつき、それでも 「勝手にしろ」 と言って、雑誌を閉じた。
「はぁ……」 溜め息をつき、隣で幸せそうに微笑う男を見る。 「修さん、好きだよ」 飽きるほどに毎日そう言う男。 「修さんは?」 言われない言葉に期待しながら、それを欲しない男。 「こんなことやってんだ。わかるだろ?」 そう言って俺は、男に甘いキスをする。 俺をメロメロにする、飽きっぽい、悪い男。 俺がその言葉を言ったら、お前は飽きて、俺を捨てるんだろ? 悪い男。 だから俺は、今日も冷たい男を演じる。 言葉を与えない代わりに、甘いキスを与える。 それだけでおまえは俺にメロメロで。 おまえが俺を手放せなくなるまで、当分は冷たい男でいるからな。 |