イチネンメ。

 

 今日でつきあって一年目。

 倫は憶えてないんだろうなぁ。

 今でこそ俺を好きになってくれたけど、あの頃はどうだったのかわからな

い。

 プレゼントを贈るのも変だし。

 お祝いにケーキを買うのもオカシイ。

 だって倫とはもっとずっと長く一緒にいるんだから。

 

 

 

 今日でつきあって一年目。

 隣でなんでもない顔してる真次は憶えているんだろうか?

 オンナみたいに俺だけそんなこと憶えてて、俺ばっかり好きみたい。

 だって真次が俺のこと好きになってくれるなんて思ってもみなかった。

 一年もつきあっていられるなんて。

 

 

 

 

 

「「ねえ、」」

「「何?」」

「「いいよ、そっちから」」

「「…………」」

「倫からいいよ」

「真次からいいよ」

「倫のが早かったってば」

「真次から言わなきゃ言わない」

「何それ?」

「なんでもいいだろ!?」

「はいはい。……あの、今日、さ」

「!」

「ウチ、来ない?」

「……いいよ」

「よかった。で、倫は?」

「もういい」

「えっ? なんで!?」

「別に」

「好きだよ、倫」

 

 

 

 

 

 ズルイ。

 真次はズルイ。

 俺がそう言われると安心するのを知っているのに。

 やっぱり俺ばっかり憶えてて、少しやさぐれた気分になったのだってその

一言でどっかに行っちゃう。

 バーカ、俺だって好きだよ。

 

 

 

 憶えてくれてるのかな?

 訊いてみようかな?

 きっと倫は自分からは絶対言わないだろうから。

 別に憶えてなくったって構わない。

 いつも通り隣で倫が笑ってくれれば俺にはそれだけでいいんだから。