運命の出逢い

 

「みゃあび」

 舌足らずな口調で壱悟が言う。

「呼び捨てかよ?」

 不服そうに口を尖らす雅。

「いいじゃないか。叔父さんって呼ばれたいのか?」

「冗談じゃない」

 溜め息混じりにそう言う雅に、壱悟がじゃれつく。

「随分気に入られたもんだな。はじめて喋ったと思ったら『雅』とは」

「何、嬉しそうな表情してんだよ? 兄さんの子だろ?」

「我が子が喋り出したんだぞ。嬉しくないわけがない」

 兄はそう言って豪快に笑った。

 

 

 

「雅くんじゃない?」

 呼ばれて振り返ればそこには義姉。

「お久しぶりです。咲良さん」

 そして傍らには小さな生物。

「壱悟?」

「正解。久しぶりでしょ?」

 壱悟は雅を見上げ、放心している。

「こんなところで、珍しいわね。デート?」

 さすがに独りで公園などに来る雅ではないだろう、と咲良は言う。

 確かにデートなのかもしれない。

 インドア派の雅をアウトドア派の恋人が無理矢理連れてきたのだ。

 雅が「つまらないから帰る」と言えば、「ちょっと待ってろ」とどこかへ行って

しまったが。

「雅〜!!」

 戻ってきた恋人を見て咲良は苦笑した。

「お友達と来てたのね。ごめんなさい、デートなんて」

「いや、別に」

「じゃあ、私たち行くわね」

 咲良はそう言ってまだ放心してる壱悟の手を引いて歩き出した

 

 

 

 

「雅 雅

 じゃれつく壱悟に珍しく鬱陶しがらず、雅が苦笑する。

「どうしたの?」

「はじめて喋った言葉、憶えてるか?」

「何? そんなん憶えてるわけないじゃん。ママとかじゃないの?」

 自分で言った「ママ」の言葉に壱悟が顔を顰める。

「違ったよ」

「じゃあ、何?」

 雅は首を振って苦笑するだけ。

「帰って兄さんにでも教えてもらえ」

 きっと運命感じるから。

 

甘い運命