言わせて。
「好き」 「好き」 「大好き」 「愛してる」 毎日彼は飽きるほど言う。 でも、俺は―――…?
「廉、好きだよ」 そう言って雄大は俺の髪にキスをする。 うしろからぬいぐるみのように抱かれ、耳元で言う。 俺も……、言いかけて遮られる。 「廉、腹減らない? 飯食いに行く?」 うしろから顔を覗き込まれ、訊かれる。 外で食べるより、雄大のご飯のが好き。 好き嫌いが多い俺に、しょうがないな、って微笑って作ってくれる雄大の 手料理。 「ん?」 こういうとき、雄大は俺の返事を待つ。 口数が少なくて、自分の言いたいことをあんまり言えない俺に、急かさず 訊く。 「作って」 俺がそう言うと雄大はやっぱり微笑ってしょうがないな、って言って立ち 上がる。 「ちょっと待ってろな」 そう言って子供にするみたいに俺の頭をくしゃくしゃって撫でて、雄大は キッチンへ立つ。
どうして 「好き」 の返事は待ってくれないの? 俺だって、雄大に伝えたいのに。
「廉、オイシイ?」 そう言いながら雄大は俺の頬についた米粒を取った。 頷くと嬉しそうに笑い、また俺の頭を撫でる。 「好きだよ、廉」 そして言いたい言葉はまた遮られる。 「おまえが俺の料理食べてくれるの嬉しい」 ホントに嬉しそうに笑う雄大。 俺だって嬉しい。 我侭な俺に嬉しそうに料理作ってくれたり、いつもそばにいてくれたり。 「好きだ」って言ってくれたり。 この嬉しいを雄大にも伝えたい。 いつも俺を幸せにする 「好き」 って言葉を。 「廉、好―――」 言いかけた雄大の口を急いで塞ぐ。 両手を伸ばして口を押さえる。 それ以上言わないで。 たまには俺の気持ちも聞いて。 「好きだよ、雄大」 ね? 嬉しいでしょ? |