シャンプー

 

 彼の髪からいつもと違う香りがした。

 シャンプーを変えたのはナゼ?

 恋人が出来たから?

 同じシャンプーを使うような仲なの?

 

 

 

「まあちゃん、好きな人いる?」

「何? 急に?」

「いるの?」

「いるよ」

「つきあってる? その人、恋人なの?」

「……残念ながら。片想いだよ」

「まあちゃん。最近シャンプー変えた?」

「……うん。それが?」

「ううん。いつもと違うから」

「いい香りじゃない?」

「……まあね」

「でしょ?」

「まあちゃん。好きな人って誰?」

「なんで?」

「俺の知ってる人?」

「……うん、まあ」

「誰?」

「サツキは?」

「ん?」

「サツキの好きな人教えてくれたら、教えてもいいよ」

「…………」

「ほら、嫌でしょ? だから俺も内緒」

「……まあちゃん」

「何?」

「俺ね、まあちゃんが好きだよ」

「何? 急に。俺もサツキ好きだよ」

「そうじゃなくて。俺の好きな人。まあちゃんだよ」

「…………」

「まあちゃん?」

「このシャンプーね、好きな人と同じなんだ」

「…………」

「ふふふ、わからない?」

「?」

「ほら、同じ香り」

「……俺?」

「この部屋に他に誰がいるの?」

「だって……」

「好きだよ」

「……じゃあこれからは、ずっと同じシャンプーだね」

 

 

 

 彼の髪からいつもと違う香りがした。

 好きな人と同じシャンプーに変えたらしい。

 これからもずっと同じ香りがしてるはず。

 

掌編