愛する君から

 

 晃の機嫌が悪い。

 さっきからずーっと顰めっ面だ。

 今日の自分の何がいけなかったというのか。

 晃の誕生日。

 腕を揮って料理を作り、ケーキも用意した。

 晃が欲しがっていた卓袱台だってプレゼント済みだ。

 なんだよ、卓袱台ってと思うがしょうがない。

 可愛いハニーの言うことは絶対なのだから。

 なのになんだっていうんだ。

 会ってから徐々に機嫌の悪さが増してさえいる。

「あーきーらー?」

 何がそんなに気に入らないのか、ついに無視を始めた晃にいい加減、俺の

機嫌も悪くなる。

「何が気に入らないんだ?」

 おまえのことは好きだけど、心の中まではわからない。

 そう言って口を噤む俺に晃がついに口を開いた。

「だって……」

「ん?」

「……なんだってんだよ!!」

 その言葉とともに凄い勢いで太腿を蹴られる。

 卓袱台がガタンと音を立てた。

「痛っ……!!」

 暴力的なのはいつものことだが、これは酷くないか?

 俺がいったい何をしたっていうんだ!?

「何が気に入らないかだって!? そんなこともわかんねーのかよ!?」

 コイビトのあまりの仕打ちに言葉を失っている俺に、畳み掛けるように晃が

言う。

「おまえが何も言わないからだろうが!!」

 

 ケーキが食べたかったわけじゃない。

 プレゼントが欲しかったわけじゃない。

 そばにいて欲しかった。

 でもそれだけじゃ足らない。

 言葉にして。

 ただ一言でいいから。

 愛する君から、だけでいいから。

 

「ごめん」

 そう言って晃を抱きしめる。

 やっとわかった不機嫌の理由に自分の迂闊さを呪う。

「ごめんな。愛してるよ」

 髪にキスをし、そっと躰を離して顔を覗き込む。

「スキスキスキスキー」

 顔中に降らしたキスの雨にちょっとだけ晃の顔が綻ぶ。

「誕生日おめでとう。おまえが生まれてきてくれて嬉しい」

 

愛する君から