次の恋まで

 

「もう、終わりにしよう」

 アイツが言った。

「そうだな」

 俺は答えた。

「じゃあな」

 何も言わないアイツに代わり、最後に笑って背を向ける。

 背後からは何の声もかからなかった。

 

 なあ、おまえは今、どんな表情をしてる?

 

 

 

 俺とアイツが“そーゆう関係”になって2年ちょい。

 俺に抱かれながらもアイツは他の女を抱いた。

 それでもうまくやってきたつもりだし、セフレでも構わなかった。

「もう、終わりにしよう」

 なんて言われるまで、ずっとずっと続くんだと思ってた。

 何の確証もないのに、ずっとずっと続くんだと、思ってたんだ。

 

 

 

 女と寝ることを咎めたりしない。

 俺だって他にも相手がいるんだから。

 後腐れないセフレなんてお買い得だろ? なんて。

 強がって見せたけど、ホントはずっとおまえだけだったんだ。

 リップサービスだと称して本音を伝えていたこと。

 おまえは気づかなかったの?

 

 

 

 次は失敗しない。

 そばにいるだけでいいなんて、そんなの嘘だから。

 次の恋はちゃんと気持ちを伝えるよ。

 おまえに言えなかった言葉。

 胸に溜まってこんなに苦しくなるのなら。

 

 大の男が往来で、醜い泣き顔晒すなんて。

 恥ずかしいったらありゃしない。

 それでもそんなこと気にする余裕もないくらい。

 ずっとおまえが好きだった。

 きっとこれからも。

 次の恋が見つかるまでは、おまえが俺のイチバンだけど、それくらいは

許せよな。

 

掌編