愛のカタチ

 

 性格が悪いのは自覚してる。

 思ったことをそのまま口に出すから、比例して口が悪いのも。

 もちろんそれが許されるような容姿じゃないことも。

 十人並みの見た目のくせに性格が悪いなんて最悪だ。

 自分でもそう思ってるし、友達なんていない。

 それなのに木村は俺が好きなんだと。

 謎な奴だ。

 

 

 

 あまりにも人間としての生活能力が欠如している俺に自分でも知らぬ間に

面倒見がよく、文句も言わない恋人が出来た。

 木村は初対面の俺にいきなり好きだと言い、無視する俺の世話を焼き、

俺の日常に溶け込んだ。

 どうやら木村の中での認識が“恋人”というものなんだと気づいても、俺は

何も言わなかった。

 別に何を与えられても、求められても、困ることなんてないから。

 

 作るのが面倒臭いから自炊しない。

 食べるのが面倒臭いから食事抜き。

 そんな生活を続けていれば身体が持つはずもなく。

 俺は無理矢理(面倒臭いから抵抗もしてないけど)木村と暮らすことに

なっていた。

 

 それがアイツの“愛”なのかは知らないが、奴は朝から晩まで俺の世話を

焼く。

 朝起こされ、朝食を食べさせられる。

 顔を洗い、歯を磨き(いくらなんでもそれは自分でやってる。……たまに歯

磨いてもらうけど。だって疲れるし)服を着せられ、弁当を持たされ、送り出さ

れる。

 アイツだって働いているだろうに、俺が帰れば、着替えさせ、すでに出来て

いる飯を食わせ、風呂に入れる。

 まれに躰を要求されるが、何もしなくても気持ちよくしてくれるので、好きに

させている。

 

 好きだ、と言って、世話を焼く。

 これって恋人にすることなのか?

 不思議には思うけど、楽なので好きにさせておく。

 毎日疲れないのかなぁとは思うけど。

 

 んでもって、木村は今日も、

「春希、好きだよ」

 と、幸せそうに微笑うのだ。

 

掌編