理由なんてない
−2−

 

「冬也」

 奈津がそう言って俺の頬にキスをする。

 それが合図のように今まで何度となくしてきた行為が始まるのだ。

 躯中余すところなく唇を落とし、何度も好きだと、愛しているのだと囁く

奈津。

 おまえの好きは、本当に愛?

 はじめて出来た友人だからじゃなく、ちゃんと俺のことを好きだと思って

いるのか?

「好きなんだ」

 だから許して、とでも言いたいのか。

 俺が辛そうな表情をすれば、奈津は決まって優しく囁きキスをする。

 その言葉に俺が動揺するとも知らずに。

「冬也」

 酷く甘い声で奈津が囁く。

 本当に愛されているような優しい愛撫に涙が出そうになる。

 これは本当に愛?

 

 

 

「あっ……!」

 しつこいくらいに濡らされたそこは容易に奈津を受け入れる。

 慣らされた躯。

 次に来る快感を知っている。

 それでも歯を食いしばり、必死に声を殺す。

 シーツを掴み、奈津に縋りつこうとする腕を押し止める。

「んっ……」

「好きだ」

 耳元で奈津が囁く。

「冬也、愛してる」

 その言葉に俺は一際感じ、思わず出た喘ぐような声に奈津が嬉しそうに

喉を鳴らした。

「冬也、」

 殊更優しく奈津が俺の名を呼び、抱き寄せる。

 思わず抱き返しそうになったその掌をぎゅっと握り締めた。

 好き。

 本当は奈津が。

 好き。

 きっと彼が想う以上に。

「好き」

 荒い息の中、何度も繰り返される言葉に胸が震える。

 同じ言葉を返すのは簡単。

 ただ彼を信じられないのは、俺が臆病だから。

 君ナシで生きていけないのは、きっと俺のほう。

 

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