「おかえり、美弥」 彼に呼ばれ、あたしはやっと名前を取り戻す。 「寒かっただろう?」 そう言って抱きしめられ、冷えた耳に口づけられて。
子供のままのあたしの為に。 たくさんのスキンシップとたくさんの愛を。 たくさんたくさん貰っても。 返せるものはひとつもなくて。 それでも当たり前のように与えられているそれがなくなれば、あたしは不安に押し 潰される。
「愛してる」 死ぬまで聞かせて欲しいから。 ずっとそばにいて。 あたしを必要として。 ずっとあたしを愛してて。 あの日、あたしを引き留めた言葉の通り。 一生あたしのそばにいて。 |