望む言葉を貰っても。

 何度名前を呼ばれても。

 あたしは卑怯で。臆病で。

 あなたを試すようなことばかり。

 あたしが生きる理由はあなただけど。

 あなたが生きる理由はあたしではないのでしょう?

 

 

 

 

 

「どうして断ったの?」

 聞かなかったことになど出来ず、あたしは彼に問いかける。

「あの女性の言う通り、あたしは浮気もするし、美しくもない。あなたを縛る理由は何も

ないのに」

 彼の着物の袖も握り、彼の瞳を見つめ、彼の理由を知りたがる。

 あたしの理由はあなただけど。

 あなたの理由は何なの?

 探るように彼を見つめれば、いつもようにそっと頭を撫でられる。

 愛しているというように。

 君だけだというように。

 あたしはそれに騙される。

「それでも君を愛してる。どんな女性だろうと愛しい心は偽れないよ」

 堪え切れず溢れ出した涙に彼が唇を寄せる。

 

 

 

 あたしを愛して。

 あたしだけを。

 あたしがあなただけだと思うように。

 あなたもあたしだけだと。

 あたしを縛って。

 誰にも目を向けないでくれと。

 ずっと自分だけを見ててくれと。